思い出の南極



『(12)おわりに』
 昨年夏、市民スポーツ連盟の呼びかけでウラジオストク国際ウォーキング大会に参加し、黒澤明監督の映画「デルス・ウザーラ」ロケ宿泊地(アルセーニエフ市)を訪れた。年齢を重ね映画のテーマもわかるようになった。その後、旅に誘っていただいた小林昌仁さんに頼まれ、思い出の南極を書いてみた。
 昭和基地で越冬中のある日のこと、ふと対岸の南極大陸が目に入った。いつの間にか、自分が南極に居ることをすっかり忘れていた。くり返す日常生活に風景が当たり前になり、ディテールに関心を失ってしまっていたのだ。
 歩くことも似ているかもしれない。歩行は反復運動(*)が中心である。人々は、日常に“律”を立て、“ルーティン”を行とする。その中で、必然的に色々な気づきが生れる。旅には出会いの楽しさ、発見の悦びもある。
 南極の体験は、私の目を広い世界へ導いてくれた。今、「21世紀の朝鮮通信使友情ウォーク」で、また新たな世界へ導かれている。
 「思い出の南極」は、自分の撮った昔の写真を頼りに綴った。期待に応えられたかどうか・・・。いずれにせよ、私には有難い機会であった。小林先輩や付き合って下さった皆さんに、お礼を申し上げます。
 *ウォーキングの一歩一歩それ自体は決して同一ではなく、常に新たな実験といえる。
(筆者の顔写真は「朝鮮通信使友情ウォークの会」金井三喜雄氏の提供です。お礼申し上げます。)



昭和基地のある東オングル島より対岸に南極大陸がみえる。内陸で冷やされた空気が大陸の斜面を下って(ギリシャ語由来でカタバ風、斜面下降風という)流れ出る。斜面に雪煙が筋をなし、風向に沿い凹凸(サスツルギ:ロシア語)をつくる。ついには海氷面に落ちて舞い上がる。





昭和基地の背後の丘(天測点)に立つ菩薩像。裏面には「樺太犬のみ霊(たま)安かれ 昭和33年11月」の銘がある。第一次越冬隊の引き上げで15頭の犬が基地に繋がれたまま置き去りにされた。犬たちの死を悼み彫られた。北村泰一先生(筆者の恩師・第一次隊の犬担当)からいただいた言葉でお参りした。高さ30pほどの小さな仏像だった。





No.1『南極観測隊員になったワケ』
No.2『晴海埠頭を出発』
No.3『航海・オーストラリア西海岸へ』
No.4『氷海の中へ』
No.5『夏作業中の思い出』
No.6『観測隊の構成』
No.7『越冬交代』
No.8『観測のスタートと生活、“ションドラ”のこと』
No.9『航空機で空気試料を集める』
No.10『極夜の生活』
No.11『南極の春』





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