シンボウ先生(森望)の老いの科学・長寿への道



 

『第7回 ウォーキングの効能』

 まだ世の中が「コロナ」の最中(さなか)、「第6回」を書いたあと、しばらく個人的な理由で書く気力がなくなっていました。(よくないですね。でも、人生、そういう時もたまにあります。)だいぶ時がたって、また書けるようになりました。(「再起」すること、できること、大事です。よかった。)ということで、今日は「第7回」です。

ウォーキング初体験
 久しぶりに、川内会長の書かれているのも読んで、大いに刺激を受けました。少し見習おうと思い、先月、人生で初めてノルディック・ウォーキングに参加しました。いま住んでいる地区の公民館の活動の一つで、近場の「元寇防塁を歩こう!」というのがあって、それに出てみました。ポールを手にして歩くのを初めてやって、「とてもいい!」と実感。鎌倉時代の「元寇」を防いだ博多湾沿岸に残る歴史的遺跡のひとつである「防塁」について学べたこともいいのですが、強調したいのは「ノルディック・ウォーキング」することのすばらしさ。このコーナーの読者の方からすれば、「何をいまさら」という感じだと思います。素人の私なんぞが言う価値、ありません、ね。でも、「老化研究」を長年やってきて、実際に自分が歳取って年金生活者になって、そんな中でやってみて、これはいい!とすぐに思えたこと、それはとても「価値あること」だと思います。自信をもって書いてみましょう。川内会長が最近書かれている内容も参考にしています。
 まず、ポールを手にして歩くと「姿勢がよくなる」、それを実感しました。これも皆さんにとっては「何をいまさら」ですね。でもそれをする人としない人とでは大きな差がある。ポール・ウォーキングで得られること、それは「姿勢」「歩行」「活力」、そして「会話」だと思います。姿勢をよくして、左右のバランスをしっかり取りながら歩く。すると自然に「心肺機能」を高め活力が上がる。その間、人と適度に会話する。普段、出会わなかった人と初めて話すこともある。そんな中から、大いなる刺激を受けたり、自分なりに「発見」すること、それもあったりします。
 私は仕事柄、ほぼ一日中机に向かって、あるいはパソコンに向かって、座って仕事することが多く、自然、猫背気味になっています。すーっと背筋を伸ばす、そういうことが全くない生活でした。良くないですね。川内会長の書かれたのを読むと、ふつうの姿勢に比べて、猫背でいると酸素をより多く消費して、運動に必要な呼吸循環応答がうまく回らなくなるとのことでした。歩く時、猫背にならないように工夫しようということなのですが、ではどのようにするのが良いのでしょう?
 答えは、ノルディック・ウォーキングですね。地面から肘くらいの長さの杖で上半身を起こす姿勢になるのが効果的。スキーのストックをつくような感覚で歩くのです、ね。登山グッズにもトレッキングポールが出てきます。ノルディック・ウォーキングのポールとは少し違いますが、肘が上がるくらいの長さのものを使うのは同じです。昔からお年寄りがよく使う、腰の高さくらいの「T字型」の杖はあまりおすすめできません。これはたぶん、それを手にした英国紳士がカッコよく見えた、そんな名残があるように思います。しかし、老人の健康と安定性を考えると、長いポールを2本両手で持って身体を交互に支えるほうがはるかに健康的で安全です。下腿の長さのT型の杖では上半身は起き上がりません。ですので、猫背になりがちです。猫背の姿勢では、膝が上がりにくく「すり足」ぎみになる。そのためつま先が小さな段差にひっかかりやすく、転倒の原因ともなります。一旦骨折でもすると、老人は治るのにまた時間がかかってしまう。「寝たきり」のリスクが上がる。ですから、姿勢を良くして歩く習慣、大事ですね。よい姿勢で元気に楽しく歩く。先日、初めてポールを手にして二十人ほどのグループで初対面でも語らいながら、楽しく歩くことができました。

 「超老人」への心構え
 さて、今、大谷翔平や山本由伸らが頑張ってくれているロサンゼルス・ドジャース、そのロサンゼルスから車で2?3時間南へ走るとサンディエゴの街があります。こちらには球団としては、ダルビッシュのいるパドレスがありますね。そのサンディエゴの少し手前の海岸沿いの高台にラホヤという美しい街があります。ラホヤの名前はスペイン語で「宝石」、ホヤはジュエリーのことなのです、ね。ラホヤ地区にはカリフォルニア大学のサンディエゴ校(UCSD)がありますが、そのほかに民間の最先端研究施設が多く集まっていることでも有名です。そのひとつスクリプス研究所の中に応用医学研究をめざすトランスレーショナル研究所のエリック・トポル博士の書かれたことを川内会長が紹介していました。そのトポル博士、最近「スーパーエイジャー」という本を出版しています。「超老人」という意味ですが、高齢でも元気で活力あふれるスーパー老人を意図しています。トポル先生は川内会長と同じ循環器の先生ですから、どういうタイプの人が「超老人」になっているかについて、医学的な知見に基づいて一般の人にもわかりやすく記述しています。米国の医学雑誌のランセットやワシントンポストの新聞にも紹介されたとても評判になった本です。
 近年、「長寿」については(私の好きな)「長寿遺伝子」や「寿命遺伝子」(私のここのコラムの「第1回」を参照ください)が話題になりますが、長寿への遺伝子の寄与は20%で、残りの80%は生活習慣と生活環境と環境要因だとトポル博士は言います。(私自身は、遺伝子三割、習慣三割、環境三割、他一割と考えていますが、まあ似たようなものです。)もって生まれた「遺伝子」のことはどうしようもないので、それ以外のことをどう気をつけて行くか?それは端的にいうと、私はよく「カロリー控えめ、刺激は多め、そして時々シェープアップ」だと言っています。過食をさけ、食事はバランスよく、なるべく「色とりどり」を心がける。刺激は「脳への刺激」。塗り絵や俳句でも、読書でもいいけれど、時々「音読」すること、声を出すことを意識する。脳と嚥下に気をつける。「シェープアップ」はスタイルをよくするとか格好つけるということではなく、とにかく身体の運動。これはスポーツというより、よく言われるエクササイズ。これについて気をつけるべきは基本的に2種類、「筋トレ」と「持久性」です。「筋骨系」と「心肺系」といってもいいかと思います。身体を支える力をきたえるのと、代謝系を上げることが大事です。

 「体幹」を鍛える
 私自身は二度の「定年」を経て、だいぶ暇になって、いろいろ悩み迷いもしましたが、そういう中で現役時代には全くやっていなかったトレーニング施設に通うことを、とにかく週一レベルではするようになりました。すると、すぐに気づいたことに「体幹」が鍛えられた、ということがあります。筋トレは手足の筋肉を鍛えるというよりも、体軸が鍛えられる、それがいいのだと納得しました。いわゆるスポーツが上手くなるには手足を鍛えることでしょうが、老人の健康増進のためには、まずは「体幹」を鍛えることだと思います。身体の芯がしっかりする。それが何より大切です。以前、デスクワークの多い仕事をしてきた頃は、時々歩くと足が痺れるような感覚があって、病院で検査してもらうと脊柱管狭窄症だの脊柱湾曲だのと指摘されたりもしました。しかし、あの頃よりもっと歳をとっているのに、週一のトレをするようになってからそれは全くなくなりました。ありがたいことです。

 「刺激」と「出会い」
 そして、バランスの良い食事と十分な睡眠をとること。あとは余暇の活動、好きなことをやる。読書でも音楽や絵でも、一緒に楽しめる仲間をみつけて、時々話をしながら続けること、それが大事です。語らいは大切。家族がいる人はまだいいですが、長い人生の果てに、独居老人になってしまったら、勤めて定期的に触れ合う仲間を得ることが大切です。
 その意味では、地元の公民館や老人クラブに顔を出す、まず何かに参加してみる、それも新しい世界が開けるきっかけになるかもしれません。実は、私自身、先月、冒頭でお話しした「元寇防塁を歩こう!」のノルディック・ウォーキングの会に参加して、思いもよらぬ出会いがありました。私は、今年になって、あるきっかけで音楽生成AIを活用して「老い」や「人生」、あるいは「生命」や「脳と心」のテーマで「歌」を作っていました。この歳ですのでストリート・ミュージシャンのマネもできないので、ただパソコンで作り続けて、そのほとんどはまだパソコンの中だけにあります。でも、2曲ほど、今住んでいる土地の公民館が創立30周年になる、ということを聞いて、ああ三十年は世代が変わる、大事な節目だ、と思って、勝手に楽曲を作って公民館の人に聴いてもらいました。そうしたら、結構好評で気をよくしていたのですが、歩きながら、ふとそんな話を同年代と思われる人としていたら、先方は、な、な、なんと学生時代からバンド活動もやっていて、いまは作詞家だとか、米国でレコード出版もしている、とか呟く。驚きました。で、その人が、その曲、聞かせろ、というのでメールで送ると、こちらはズブの素人なのに、ずいぶんと率直に良い曲だと褒めてくれる。話がとんとん進んで、出会ってから2週間でその私が(いや、半分は AI)が作った公民館への「応援歌」を YouTube にアップしてくれました。

 ミュージック・デビュー
 そのひとつ、聴いてみてください。

 歩いて健康も大事、出会いも大事。私の初体験の「ノルディック・ウォーキング」は、一石二鳥のすばらしい日になりました。これからはウォーキングも心してやっていきたいと思います。




No.1『第1回 老化と寿命:まずは、夢のない話から始めよう』
No.2『第2回 松と亀:アメリカもおいしい』
No.3『第3回 遺伝子の老化:二重らせんとジム・ワトソンの老い』
No.4『第4回 身体の中の五輪』
No.5『第5回 細胞の老化:自食と自浄とライフスタシ』
No.6『第6回 共に生きる:家族・親族・友・ウイルス』



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