表紙

思い出の南極



『(4)氷海の中へ』
 豪州西南海岸パース近くのフリマントル港に1週間停泊し、水や生鮮食品、燃料などを補給する。出航するとすぐに暴風圏だ。南半球の地形では、厳寒の南極大陸(最高標高は4000m超)の周りを相対的に温かい海洋が囲む。このため大洋上は常に低気圧帯となり、空はどんより曇り、嵐や激しい波が立つ。観測隊員のくつろぎスペースの壁に、誰かが振り子をつるし角度目盛りを記していた。私は船に弱く、頭が重くなると、いつも10数度以上になっていたことを記憶する。
 氷山が見え始めると、波は静かになる。そして氷海に進入、びっしり広がる氷を押しのけ船は進む。「ふじ」は全長100m、満載排水量8,449トンだが、前進しては氷に阻まれ、後退・前進を繰り返す。ついに夕方近くまで奮闘するも、もうほとんど進まなくなった。ブリッジに緊張感が漂い、艦長はその日のチャージングは終了と決断した。我々も邪魔にならぬように隊員室へ退散する。
氷原に停泊した「ふじ」をみつけ、アデリーペンギンの一団が見物にやって来た。舷側に並んだ乗員との対面は、まさに“エーリアン”に見えたことだろう。
 翌朝、目覚めると晴天で冷たい南風が吹き、幾重にも重なっていたパック・アイスは北へ流され、青い水面が広がっていた。南半球では北半球とは逆に南風が冷たい。さすがに百戦錬磨の艦長の判断は見事だった。



パックアイス(積層氷)の海を前進後退を繰り返して水路を開く。バックした船首方向の海氷面。





珍しい船と人間を見物するアデリーペンギンの一団。羽を広げ緊張している。



次回「夏作業中の思い出」につづく

No.1『南極観測隊員になったワケ』
No.2『晴海埠頭を出発』
No.3『航海・オーストラリア西海岸へ』





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